2010年春季低温工学・超電導学会 セッション報告

5月12日(水)
A会場 9:30-18:00

Bi 系 / Y 系評価 1A-a01-05 座長 大松 一也

本セッションでは5件の報告があった。
内藤(岩手大)らは、DI-BSCCO線材を積層したコイルや電流リードの内部発熱や熱侵入の設計に必要となる熱伝導率の実験結果を報告した。 線材を複数枚積層して厚さ方向と幅方向の熱伝導率を測定し、幅方向の熱伝導率が母材である銀の熱伝導率によるものであること、それに比較して厚さ方向は1桁小さくBi材料の 寄与が示された。
稲田(豊技大)らは、バリア入りBi2223線材の垂直磁場下での交流損失低減に関する最新の研究成果を報告した。従来は、フィラメント間にSrZrO3を バリア材として用いて商用周波数より高い交流応用を目指してツイストピッチを短くするとJcが著しく低下する問題点が生じていた。 今回、バリア塗付厚の最適化、線材幅を2.7 mmに狭小化、ツイスト加工時の中間熱処理の導入、を施すことによって、Jcを維持しながら低交流損失化を 図ることに成功した。Bi2223線材の交流応用へ向けた着実な進展である。
川口(九大)らは、加圧焼成法によって製作されたBi2223線材の長手方向の均一性を走査型ホール素子磁気顕微鏡を用いて電流分布評価を行い、E-J特性との関係に ついて調査した結果を報告した。4種類の異なるプロセスで製作された線材の2次元電流分布測定から、プロセスの進展やJcの向上と共に電流の迂回が少なくなること、 それに連動してE-J特性におけるn値が高くなる傾向が示された。これらの評価結果を製造プロセスにフィードバックすることによって、線材の更なる高Ic化の 指針が得られる可能性が示された報告であった。
木須(九大)らは、IBAD-PLD法で作製された600 A/cm級厚膜GdBCO線材を低温レーザ顕微鏡によってTcJcの空間均一性を評価した結果を報告した。幅1 cm、2.5ミクロン厚のGdBCO膜のJcは620 A/cm、Tcは93.5 K、面内Tc分布も 0.2 K以内と優れた均一性を示した。さらに高磁場下の磁束フロー損失分布も従来の線材に比べて飛躍的に向上し、27 Tまでの20 K~77 KのJc-B-T特性も向上している 結果が示された。本線材はR2R方式で長尺線材として製作されたもので、一般ユーザーへの供給の早期実現を期待したい。
東川(九大)らは、RE-123線材を用いて銀拡散接合した試料を対象として、直流ならびに交流通電時における3次元電流分布評価を行った結果を紹介した。評価は試料に通電した際の 自己磁場分布を走査型ホール素子顕微鏡を用いて測定し、解析を加えて2次元シート電流密度分布として表わした。接合の線材幅を変えた場合の電流遷移状況や直流と交流の通電に おける結果が示された。本研究成果はRE-123線材の機器応用に際して、線材間の接続技術の確立に向けた基礎研究の位置づけであり、今後の着実な進展が産業界から期待されるため、 特に活発な質疑応答がなされた。


電流分布 / 交流損失 1A-a06-10 座長 淡路 智

本セッションでは、超伝導材料の電流分布測定に関して3件、交流損失に関して2件の合計5件の報告が行われた。
服部(山形大)らは永久磁石を用いたYBCOテープ線材の簡便なJc分布測定について報告を行った。 この手法はシンプルであるが空間分解能やエッジ部分での急峻な空間変化への対応などが議論された。川畑(鹿児島大)ら はピックアップコイル群を用いた細線化されたYBCO線材の電流分布測定法について報告した。この手法では、 細線化された1つをさらに2-3個に分割したモデルで計算した結果と実験結果を比較することにより、細線内部の分布まで原理的に評価できるとした。 菊地(岩手大)らは、永久磁石とホール素子を組み合わせたMagnetoscan法によるバルク体のJc分布の測定について報告した。 バルク体の評価の場合には深さ方向の分布などの情報をどのように考えるかが重要であろうとの議論となった。馬渡(産総研)らは、 2層の同心超伝導電力ケーブルにおける交流損失を、1層を円筒で近似することで解析的に計算できるモデルについて報告を行った。 この計算はおおむね良いが、片方を円筒と置くことによる誤差の評価を十分考慮する必要があるとのコメントがなされた。 桐原(鹿児島大)らは、不均一磁場中での交流損失評価として、YBCOテープをねじることでテープ面に垂直な磁場成分の分布を導入する手法について報告した。 この手法ではテープ面に平行な磁場成分の交流損失への寄与が無視できるという仮定に基づいているが、その点の妥当性について議論が行われた。 希土類酸化物高温超伝導テープは、Jcの不均一制が問題であるため、その評価が重要となる。今後の展開に期待したい。


Y 系歪み / 過電流 1A-p01-05 座長 長村 光造

著者等の希望により1A-p01と1A-p02は発表の順序が入れ替わったが峰岸(1A-p02)はGd123テープの臨界電流の引張歪依存性を報告した。 特に可逆歪の決定について考察を行ったが、その定義を明確にすることが望まれた。
西島(1A-p01)は計算で求めたフープ応力と歪の関係を考察し、推定した弾性率が実測値と一致したことは重要な知見であると考えられる。
菅野(1A-p03)はSTO単結晶基板上のYBCO薄膜の臨界電流の圧縮歪依存性を報告したが、この場合でも臨界電流に極大が観測されたことは興味深い。
山田(1A-p04)は種々のY系テープの曲げ特性を調べ、製造方法により特性に差が出ることを確認している。
坂井(1A-p05)は各種ストレス下でのRE123テープの特性変化を調べた結果を報告しているが、剥離が起こる実使用条件を更に詳しく調べることが必要であると思われた。


Y 系基礎 1A-p06-08 座長 木須 隆暢

5月12日(水)
B会場 10:00-18:00

疲労/複合材料 1B-a01-03 座長 細山 謙二

静止器(1) 1B-a04-08 座長 福井 聡

送電ケーブル(2) 1B-p01-05 座長 山口 作太郎

当方が担当した送電ケーブル(2)は全部で5件の発表がありました。
内、一件は冨中利治先生のインダクタンスの計算であり、送電ケーブルに限らない発表ですが、ケーブル導体を意識した形状 であるため、この発表のセッションに分類されているかと思います。
他の4件については、NEDOの高温超伝導テープ線材を利用した交流超伝導送電ケーブルの開発に関連することであり、 プロジェクトが発足してから時間が経ていることもあり、発表内容が計算だけでなく、実験の結果も出てくるように なった状況かと推察されました。しかしながら、発表内容を聞いていると、研究としては順調に推移している部分と 必ずしも順調でない部分がまだ模様になっていると感じられました。プロジェクトとしては山に掛かっているのであると思います。


送電ケーブル(3) 1B-p06-08 座長 王 旭東

1B-p06(ケンブリッジ大学):超電導電力ケーブルの交流損失について、線材間ギャップおよび線材幅方向の端部劣化を考慮した多層ケーブルの 2次元数値解析評価が報告された。単層ケーブルでは線材間ギャップおよび線材幅方向の端部劣化が交流損失に大きな影響を与えるが、 多層にすることで交流損失を低減できるという結果であった。
1B-p07(産総研):短絡事故でのサブクール窒素冷却超電導電力ケーブルの過渡熱特性について解析評価が報告された。30 mの三心一括型の試験 モデルケーブルをもとに解析モデルを設定し、管路内のサブクール窒素の熱物性や流量なども考慮され解析されている。長いケーブルでは 短絡事故後に管路入口の窒素が初期温度に復帰しても、ケーブル内部の温度が復帰するまでは下流の窒素が温度上昇し続けるという結果であった。
1B-p08(中部大学):直流によるデータセンターへの超伝導給配電システムについて報告された。データセンターの電力需要が増加しており、 コストや電力密度などのトータル評価で超伝導ケーブルが従来の銅ケーブルより優位になれば有望であると発表された。


5月12日(水)
C会場 9:45-18:15

磁気分離(1) 1C-a01-04 座長 岡田 秀彦

1C-a01: マルテンサイト変態により一部が強磁性体になったステンレス微粒子の磁気分 離実験の報告である。俗に非磁性と言われるステンレスが磁気分離可能である ことを示した。特にこう粘性流体中の微粒子の分離が可能な事を示した。
1C-a02: 連続して並んでいるバルク材を個々に着磁した。磁場に変化を付けて着磁可能 ということで、広い範囲に分布を持った磁場分布を作ることが可能となった。
1C-a03: 粉体の磁気分離の実験の報告である。閉塞、凝集が課題であるがフィルターの 構造等によって改善が可能な事が分かった。
1C-a04: セリアを成分とするガラス研磨剤の回収リサイクルのための研究である。未だ 基礎的な研究であるが、不純物である鉄粒子を分離可能であることを示した。


磁気分離(2) 1C-a05-09 座長 三浦 大介

宇都宮大学の酒井研究室が開発した磁化活性汚泥法を様々な浄水処理に適用した一連の発表がなされた。
適用された排水は染料排水、ジメチルホルムアミド、化学メッキ排水であり、前者2つは微生物処理で後者は自己分解法との組み合わせで行われた。 いずれも汚泥引き抜き無しで微生物による良好な処理特性が得られ磁化活性汚泥法の有効性が確認された。 また、有機汚泥に坦磁した凝集物を炭化し、新たな磁性吸着剤として利用する試みがなされ、その再利用も可能であることが示された。


小型冷凍機(2) 1C-p01-05 座長 中納 暁洋

1C-P01の講演はパルス管冷凍機のコールドヘッドとバルブユニットを分離したタイプのものを作製し、 それらを繋ぐパイプ径の最適化により従来タイプの冷凍機と比べ遜色のない性能を実現していた。
1C-P02は20 Kパルス管冷凍機の蓄冷材に関する発表で、20~50 Kの温度領域で有望な鉛粒とSUSメッシュ を組み合わせたものについて鉛粒の粒径を変えて冷凍性能の比較検討を行っていた。今後予定されている 50 K以下の温度域での実験の結果が待たれる。
1C-P03は世界各地で使用されている液体キセノン冷却用のパルス管冷凍機の長期運転実績に関する調査報告であった。
1C-P04はGM冷凍機での精密温度制御法に関する報告で、SUS薄板でうまくいかなかったものを0.5 mmのFRP薄板に変更し、 2ループPID制御を行うことで±1 mK以下の温度制御を達成していた。なぜFRPで成功したかについての今後の解析が待たれる。
1C-P05はGM冷凍機の蓄冷材に鉛粒を適用した場合の空隙率と粒径が冷凍能力に与える影響について実験的に詳細な調査を行い、 その影響は空隙率よりもむしろ粒径の方が支配的であるという結論を得ていた。


冷却システム(2) 1C-p06-09 座長 春山 富義

1C-p06:河原(中部大)らによる超伝導送配電システムにおけるペルチェ電流リードに関 する報告で、今回は特性の異なる2種類の材料を2段にすることで熱侵入を低減できる と報告された。
(Q)同じ材料(BiTe)でも性能が異なるものができるのか?
(A)プロセス等によっても作成可能である。
(Q)実機の電流値でも大丈夫か?
(A)対応できるものと考える。
1C-p07:中納(産総研)らによるGM冷凍機による水素液化速度の実験値と理論値の差異に 対する考察である。 (Q)液体容器内の温度バランスは定常になっているといえるか?液化中は過渡的では?
(A)各部の温度は液化開始後、安定で定常といえる。
(Q)冷凍機ヘッドの凝縮器から出てくるときは100%パラになっている?
(A)液化したては100%ではないと思う。
1C-p08:三戸(核融合研)らによる自励振動ヒートパイプによる超伝導マグネット高効率 冷却技術の報告である。実用を目指したシート方式の実験結果が発表されたが今回は 期待された成果が得られなかった。
(Q)動作温度が充填流体によって決まる。超伝導マグネットの冷却の実用性は?
(A)高温超伝導体はネオン等による冷却も考えられる。
(C)原理はドリームパイプなど熱音響による。熱音響冷凍の専門家との共同研究もよい。
1C-p09:岩本(核融合研)らによるレーザー核融合用固体水素ターゲットに関する報告で ある。昇華、再昇華により世界で始めて均質な固体水素層を形成した。
(Q)実機ではガラス容器ではないので固体水素の厚み、形成状態がわからないのでは?
(A)実際にも透明プラスチックを使う。
(Q)予稿では固体水素で成功したが、最終的には重水素?
(A)現状では重水素での実験ができないが原理を実証。


5月12日(水)
D会場 9:30-18:15

Nb3Sn線材 1D-a01-05 座長 伴野 信哉

Nb3Snのセッションでは5件の発表があった。うち3件はひずみ特性に関わる内 容で、依然としてひずみ特性への関心が高いことが感じられた。 まず東北大の高橋氏より中性子回折を用いたバンドル試料のひずみ特性の話が あった。J-PARCの回折装置「匠」を用いた実験に関する発表で、今回事前曲げ処 理による残留ひずみの緩和、特に横方向の場合はより圧縮側に、長手方向には引 張り側にまで変化しているというこれまでと異なる興味深い結果などが報告され た。
茨城大の小黒氏からは、同じく「匠」を用いて、ブロンズ法線材以外の線材と して、今回内部スズ法線材の残留ひずみ特性が報告された。Cu-Sn合金の大きな ピークが確認されたことや、残留ひずみに関してはブロンズ法線材と大きな違い はないことが報告された。
NIFSの高畑氏からは、「React & Jacket法」と呼ばれる、アルミニウム合金 をNb3Sn生成熱処理後にジャケッティングする新しい導体化について報告があっ た。ステンレスコンジットとの同時熱処理による0.7%近い残留ひずみを軽減する ことが最大の目的である。線材間の密着性を確保するのに使われるインジウムの コスト性などの議論があった。
大阪合金の谷口氏からは18.5wt%の高Snブロンズの熱間鍛錬についての報告が あった。Tiの添加により、粗大なδ相の代わりに微細なCuSnTi相を析出させるこ とがポイントであり、熱間鍛錬によって引張試験の絞り値を大幅に改善できたこ とが報告された。
東海大の安藤氏からはSn基合金(Sn-Ta、Sn-B、Sn-Nb)シートを用いたNb3Sn 線材の組織と特性について報告があった。Sn-Nb系で最も高いBc2が得られたと報 告された。また化合物相内で結晶粒は等方的であり径方向にも粒径が揃っている などの議論があった。


Nb3Al線材 1D-a06-10 座長 宮崎 隆好

本セッションでは5件の報告があった。 物材機構の伴野らはRTQTプロセスを複数回適用した場合のTcが1 K程度改善される可能性を示唆した。
竹内らは第三元素添加効果を調べるためのダブルスタック線材の試作状況について報告した。
伴野らは長尺化に向けて外形9 mmの銅管の内面洗浄を工夫することにより20 mmの多芯線材を試作した結果について報告した。
小泉らはNb3Al素線27本からなるCIC導体の安定性を誘導加熱法で評価し、素線の安定化銅が機能していることを示した。
菊池らは加速器用の導体化について報告した。28本素線からなる20 m級の導体が製作されているが、今後Cuメッキ速度の改善が課題として示された。
全体を通じて、Nb3Al線材の長尺化に向けた検討が進んでいる印象を受けた。過飽和固溶体とNb、Taの複合材の加工限界を超えていかに長尺化していくのか今後に期待したい。


加速器(1) 1D-p01-05 座長 三戸 利行

NMR/MgB2コイル 1D-p06-09 座長 今川 信作

このセッションではNMRとMgB2コイルについて2件ずつの発表があった。
最初に、山形大の山田より1.03 GHz NMR用サドル型コイルの設計と試作の結果について報告があった。3次元電磁界解析ソフトを用いて均一な 横磁場分布を発生するようなサドル型コイルを設計し、0.1 mm厚の無酸素銅パイプをワイヤーカット法で加工して試作コイルを製作した。 設計通りに1.03 GHzで共振することを確認し、回路のQ値として450を達成することができた。 次に、JASTECの大塚よりREBCO線材を用いた1.3 GHz NMRマグネットの概念設計の報告があった。許容引張応力が700 MPaと高いことを生かして フープ応力の設計許容値を500 MPaまで高めることにより、既設920 MHzマグネットの半分以下の線材重量に収まることが報告された。 テープ線材に誘起される遮蔽電流や軸方向・径方向応力などの評価が今後の課題である。製造コストなどについて活発な議論が交わされた。 続いて、九大の浦竹より伝導冷却のMgB2小パルスコイルの過電流通電試験を有限要素モデルを用いて考察した結果が報告された。 コイル内部の冷却面から離れた所で最高温度が生じていると考えられ,安定性改善には巻線外周部からの冷却が有効であるとの考察であった。 最後に、鹿児島大学の川越からMgB2平角導体を素線間絶縁して2並列とした導体を使った小コイルの励磁試験について報告があった。 転位箇所が1ヶ所であるにも拘わらず、臨界電流測定においては偏流による低下は認められなかった。低電流域で端部接続部を介する長時定数の 結合電流を示唆する結果が得られている。絶縁の必要性などについて議論が交わされた。


5月12日(水)
P会場 ポスターセッションI 14:05-15:35

Y系電流特性 1P-p01-05 座長 田中 秀樹

Y系電流特性のポスターセッションでは5件の発表があった。
1P-p01(早大:金光ら)YBCO線材の過電流パルス通電による劣化に関して、シミュレーション検討結果が報告された。劣化要因の一つとして熱応力に着目し、 過電流パルス通電に伴う劣化箇所付近には、線材長手方向と直行する方向へ1%程度のひずみが発生する可能性を示した。V字型に折れ曲がった写真も示された。
1P-p02(早大:王ら)では、1P-p01に関する実験結果が報告された。Icが劣化するまで過電流パルスを大きくしたところ、事前に確認していた 劣化箇所とは別に、5 mm程度離れた箇所に新たな劣化が生じた。新たに生じる劣化箇所は、事前劣化箇所から線材長手方向中央側に生じやすいとのこと。 試料を両端から冷却しており、温度が比較的高い中央側が劣化するのではとの推測。
1P-p03(九大:兒玉ら)では、CVD法で作製したYGdBCO線(Zrを1 wt%添加)のJc-B-T特性が報告された。 垂直磁場下20 KにおけるJcB依存性が小さく、10 TでJc= 3.8 x 1010 A/m2 が得られた。 また、パーコレション転移モデルとの比較が示され、幅広い電界範囲において測定値と一致することが示された。
1P-p04(九工大:高橋ら)では、CVD法で作製したYGdBCO線における超電導層厚依存性が報告された。YGdBCOは厚膜化によるJcの劣化が少なく、 層厚とJcの関係を明らかにしやすい。Jc-B特性測定の結果、厚膜化に伴うJcのわずかな向上を確認した。 さらに、見かけのピンポテンシャルは低磁界では膜厚によらず同程度であるが、高磁界下では厚い試料ほど大きくなることを明らかにした。
1P-p05(熊本大:末吉ら)では、BaZrO3を擬似層とするYBCO多層膜におけるピンニング特性が報告された。BaZrO3の総堆積パルス数が 等しくても、1層あたりの堆積パルスによりJcの磁場角度依存性が異なることが明らかにされた。3次元人工ピン化が期待される。


評価解析 1P-p06-11 座長 川越 明史

本セッションでは6件の発表があった。
熊本大の沖田らは、永久磁石上にサンプル薄膜を設置し、永久磁石とサンプル薄膜との距離を変えることによってサンプルに印加される磁界を変化させる装置を開発し、 第3高調波電圧誘導法でJcを測定した結果について報告した。サンプル中央部で測定した結果は、四端子法の測定結果と良く一致したと報告された。
九工大の南らは、磁束クリープ・フローモデルのパラメータ算出を自動化するソフトについて報告した。このソフトでは、遺伝的アルゴリズムを適用して算出を行っている。 これまでは、サンプルのEJ特性のデータにフィットするパラメータを経験則に頼って導いていたが、本手法により計算機による処理が可能になったとのことであった。
東大の宮副らは、YBCO線材周辺の磁界を、ホール素子を用いて測定し、どのような遮蔽電流が流れているかを評価した結果について報告した。YBCO線材を用いたNMRの開発には、 幅の広いYBCO線材に流れる遮蔽電流の特性を調べ、その抑制の方策を検討する必要があるからであるとのことであった。
九工大の村上らは、鉄ヒ素系超伝導体の結晶粒間の電気的結合度を向上させるために、銀を添加したサンプルを作製し、その臨界電流密度を評価した結果について報告した。 サンプルの残留磁化を測定するという手法により、結晶粒内と試料全体の臨界電流密度をそれぞれ評価した。結晶粒内のJc値は、5 Kで1011A/m2 程度と非常に高いものの、銀を添加しないサンプルでは、サンプル全体のJc値は観測されないほど小さくなっていた。 一方、銀を添加したサンプルでは、サンプル全体のJc値は、5 Kで、107A/m2 程度であることが観測されており、 結晶粒間の結合度を向上させることができたと報告された。
東北大の張らは、CVD法で作製したHoBa2Cu3O7-x薄膜のJc特性におけるZr添加効果と磁場中プロセスの効果について報告した。 Zrの添加により磁界中のJc特性が向上している結果が報告された。また、Zrを添加して磁場中で作製したサンプルは、磁場中プロセスを適用していないサンプルよりも、 C軸に平行な高磁界中のJcが向上したと報告された。
弘前大の村上らは、大気中で作製された従来の気孔を含むDy123バルクと、前駆体の加熱・溶融を酸素雰囲気で行うことにより気泡を含まない緻密なサンプルの機械特性を評価した 結果について報告した。気泡がなくなることにより曲げ強さが20%向上したと報告された。


静止器(2) 1P-p12-15 座長 星野 勉

送電ケーブル(1) 1P-p16-20 座長 八木 正史

竹内らは2層超伝導ケーブルの交流損失解析を従来の断面モデルからスパイラルを考慮した3次元解析へと拡張した。 その際に1層目と2層目の長手方向の周期性に着目し、計算機の負荷を改善しており、今後、3層以上やシールド付き ケーブルへの展開が期待される。
浜辺、孫らは、200 mの直流ケーブル(10 kV-2 kA)建設と計測システムの導入を 行っている。断熱管を先に布設し、その後でケーブル本体を挿入した布設方式を採用し、1回目の冷却、昇温は順調に 終了したとの報告があった。


磁気分離(3) 1P-p21-25 座長 西嶋 茂宏

本セッションはポスターで5件の報告があった。全体として、磁気分離の高度化を目指した研究が実施されている。 首都大の岡本は、駒沢腎クリニックの共同研究で、血液中の水銀を人工透析装置のダイアライザー部分を磁気分離装置に置き換え、 磁性を持ち水銀を選択的に吸着する磁気ビーズを利用して除去を試みた。100nm程度のマグネタイトをコアとして表面処理(SH基を固定した)して 水銀を選択的に吸着させる能力を付与するともに、磁気分離時は、加温して磁気ビーズを凝集させて体積を増加させることにより、 低磁場(0.5 T)でも分離できるようにした。また、首都大の細見は東京都下水道局と共同で、下水中のリンをジルコニウム・フェライト吸着剤で吸着させその後、 磁気分離を行うことにより、廃水の浄化とリン回収・再資源化を目指した研究を実施した。ジルコニウム・フェライトが効率的に排水中のリンを吸着するとともに、 磁気的に効率的に分離できることを実証した。一方、新潟大学の菊池は、磁気フィルターへの磁性微粒子の吸着現象をモンテカルロシミュレーションを用いて計算している。 磁気フィルターへの磁性微粒子が磁気的に吸着することは従来計算されてきたが、磁気粒子同士の相互作用は無視していた。今回の報告では、それらの相互作用も計算しており、 磁性フィルターへの堆積の様子が再現できている。より詳細な磁気分離の計算法が確立されるものと期待される。首都大の三浦は難分解性溶存有機物のフミン質を効率的に吸着しかつ 磁性を有するメゾポーラスカーボンを開発し、磁気分離を実施した。特に、フミン質の吸着効率と磁気分離の分離率を検討し、その性能の評価を実施した。 カーボンの細孔分布とフミン質の吸着特性、および坦持したカーボンの磁化と磁気分離能力を比較し磁気分離の可能性を実証した。 宇都宮大学の川上は、磁化活性汚泥法と凝集沈殿法及びアンモニアストリッピング法の処理を組み合わせることにより、酪農・畜産廃水を処理することを試みた。 その結果、汚泥の発生が無く、高度処理も可能で、維持管理も容易な手法を確立することができている。


小型冷凍機(1) 1P-p26-28 座長 西谷 富雄

冷却システム(1) 1P-29-32 座長 岩本 晃史

前川製作所・池内らは超電導送電ケーブルの実系統接続試験のために長期間安定な運転を目指した冷却システムの構築について報告した。 連続運転中のメンテナンス性などを考慮した結果、6台の冷凍機を3並列に配置する構成になっており、実応用の点から非常に興味深い報告であった。 今後実証試験が行われる予定である。総研大・夏目らは常温用途では既に商品化されている自励振動式ヒートパイプを超電導磁石の冷却に応用する検討を行っており、 その動作特性の評価結果について報告した。中部大学のグループは高温超電導直流送電ケーブルの冷却について、 サーモサイフォンによる冷却方法の検討や配管の熱侵入に関する検討結果について報告した。


5月13日(木)
A会場 9:15-17:40

Y系線材 2A-a01-06 座長 山崎 裕文

13日午前前半の「Y系線材」のセッションでは、6件の発表があった。
超電導工学研究所の宮田らは、IBAD 法による MgO 層の作製条件が CeO2層の配向度に及ぼす影響を調べている。 MgO 層が約4 nm以上になると膜厚増加とともに表面粗さが増大して CeO2層の配向度を劣化させることから、 この臨界膜厚より少し小さな膜厚のところでアシストイオンの電流値を増大させ、成膜レートを下げる2段階成膜法を実施して、 Δφ= 2.2°を達成した。そして、この臨界膜厚付近でアモルファスから結晶化すると考察している。
住友電工の阿比留らは中間層付きクラッド基板上にPLD法で GdBCO 膜を作製しているが、これまで使用していた 200 W レーザーに 代えて新規導入の 300 W レーザーを使用し、レーザービームの均一度が向上するとともに、厚膜作製時の臨界電流が増大したことを 報告した。関連して住友電工の新海らは、大電流ケーブル用の 2 mm 幅スリット線材の作製プロセスと得られた線材の特性のばらつきと 歩留まりについて報告した。
フジクラの五十嵐らは、IBAD-PLD 法による GdBCO テープ線材の作製について報告し、4.8 mm の厚膜で最高のIc = 894 A を示す 10 m 長テープを得ている。単結晶基板上で報告されている 1 kA/cm も見通せる結果であり、非常に興味深い。
その他、IBAD-MgO 基板上にPLDで GdBCO 薄膜を成膜し、特異な磁界角度依存性を観測した報告(超電導工研)と、Nd:YAG レーザーを用いて BaSnO3 や Ca のドープ量を連続的に変化させて YBCO 膜を作製し、その臨界電流特性を調べた報告(名大)があった。


Y系MOD線材 2A-a07-11 座長 下山 淳一

産総研の山崎らはSuperPower, THEVA社の市販品およびフッ素フリーMOD法によるRE123薄膜のJcの磁界角度依存性を調べ、それぞれ有効なピン種を挙げ解釈を行った。フッ素フリーMOD膜では転位による線状ピンが 働いていることが示唆された。またintrinsicピンが低温で急激に強くなることを次回報告するとのことであった。
昭和電線ケーブルシステムの小泉らはTFA-MOD法による低コストY123線材開発の現状を報告した。製造量や歩留まりの報告のほか、バッファ層をGd2Zr2O7から MgOに変えてもIcの低下がなかったこと、局所的な低Ic領域の磁気光学観察、組織観察を行いダストが基板上に残存していることが低Icの原因であることが述べられた。
ISTECの吉積らはBaZrO3微粒子の分布を変えたTFA-MOD法Y(Gd)123線材の組織と臨界電流特性を報告した。Zrの仕込量を変えると生成するBaZrO3の粒径は変わらず、その密度だけが増すとの ことで、金属比で3 wt%まで添加したが、添加量とともに磁場中のJcが上昇し続けていることから、さらに高濃度のZr添加による改善が期待できるとした。 同様なBaZrO3微粒子を含むY(Gd)123線材について九工大の鯉田らは、ピンニング特性を報告し、BaZrO3のピンニングが磁場中のJc向上に寄与すること、膜が厚いほどその効果が大きいこと を指摘した。後者についてはピンの次元性が3次元的になるためと考えられている。 住友電工の大木らは、東洋鋼鈑と開発している低磁性クラッド基板および中間層の開発状況を報告した。Ni/Cu/SUS基板の面内配向性はかなり良いが、粒間の凹凸の問題や中間層の第一層 Y2O3において配向度がやや低下することの解決が今後の課題となろう。


5月13日(木)
B会場 9:15-12:15

MgB2(1) 2B-a01-06 座長 木内 勝

九大の尾坂らは、MgB2線材に交流通電した場合の交流損失の数値解析を行い、実験 結果との定量的な一致を示した。
東大の山本らは、c軸配向とc軸が19°傾いた2つのエピタキシャルMgB2薄膜を用い て、マルチバンドが輸送特性へ与える影響について調べ、19°傾いたMgB2薄膜のJcは 磁束ピンニング以外の要因によって決定している可能性を示した。
九大の嶋田らは内部拡散法により作製したMgB2線材の組織観察から、高いJcは、結 晶の高密度化による電流パス密度の向上によるものであることを報告した。
NIMSの戸叶らも内部拡散法を用いて、多芯化による組織や超電導特性への影響について調べ、 更なる高Ic化のためには、Mgの拡散距離を考慮し、650℃より若干低い温度での熱処理が有効であることを示した。
その他、日本大学の中山らによるビタミンCを添加したMgB2の特性評価や、東海大学 の金澤らによるステンレス鋼管(SUS304)シースを用いた細径線材の加工性及び超伝導特性への影響について報告があった。


JT-60 2B-a07-11 座長 大内 徳人

本セッションでは、JT-60のトカマク本体コイルの超伝導化(JT―60SA)に関する5件の報告が議論された。
前半の3件は、コイル部に使用される超伝導導体製作から性能評価、自己磁場測定に関する報告で、後半ではヘリウム分配システム及びサーマルシールドの設計と試作についての報告が行われた。 使用される超伝導導体はケーブル・イン・コンジット型(CIC)で、ケーブル製作の報告では、製作装置、ジャケット自動溶接機及び検査方法等が報告された。 超伝導ケーブルの安定性評価及びは自己磁場の測定の報告では、MQEの通電電流及び温度依存性、クエンチ時の導体内部での電流転流現象について議論が行われた。 冷却設計の報告では、室温からの冷却についてヘリウムガスモード変更時の温度推移について議論がなされた。


5月13日(木)
C会場 9:30-12:15

磁気冷凍機/センサ 2C-a01-05 座長 木村 誠宏

磁気冷凍機/センサのセッションでは、磁気冷凍関係2件、温度計の開発1件、超伝導検出器1件、MgB2液面センサー1件の計5件の講演が発表された。 概要を次に示す。
2C-a01 室温磁気冷凍機における磁性材料特性が冷凍性能に及ぼす影響についての発表であった。 講演では、磁性材料の特性を仮定した解析が報告されていた。質問にもあったように実際の磁性材料の物性を導入した効率・冷凍能力の解析への発展が望まれる。次回報告を期待する。
2C-a02 窒化ガドリウムの合成とAMRサイクルにおける性能評価に関する発表であった。講演では、窒化ガドリムの特性と磁気冷凍サイクルの測定結果が報告された。今後の研究成果を期待したい。
2C-a03 極低温用薄膜温度計の開発に関するものであった。市販温度計に比べて個々のセンサーのR-T特性の偏差が少なく、代表的特性により温度換算が可能であることが示唆された。 今後の研究進展による実用化と価格設定が楽しみである。
2C-a04 1THz帯以上での天文観測等に使用する超伝導検出器の設計に関する報告であった。講演では、センサーの設計を中心的に発表されていたがセンサーの特性と極低温温度の関係性ならびに 特性試験方法に関して充分な説明がなされていない印象を受けた。次回のセンサーの特性試験結果の報告に期待した。
2C-a05 MgB2液面センサーの外部ヒーターに対する熱応答性について報告された。個別のセンサーに対する熱応答特性に関する解析が行われている印象を受けた。 一般的なMgB2液面センサーへ対応可能な代表的特性への研究進展を期待する。


回転機/変圧器 2C-a06-11 座長 岩熊 成卓

5月13日(木)
D会場 9:15-12:15

超電導応用(1) 2D-a01-03 座長 中村 武恒

東北大・奥村組のグループは、超電導体と永久磁石を利用した 超電導免振装置において、銅板ダンパーを用いたシステムにおける 振動伝達特性と振動減衰特性の関係を実験的に検討した。銅板をダ ンパーとして利用することによって、振動減衰特性は改善されるも のの、振動伝達特性はむしろ悪化する結果が得られ、今後は両者の 低減が可能なシステムを検討する必要があるとのことであった。
神戸大・物材機構のグループは、ヘリカル型MHD発電機の流動特性 について、継続的に検討している結果を報告した。今回は、電極直径 を系統的に変化させ、流体損失と流量との関係を実験結果に基づいて 評価した。その結果、流量が小さい領域における流体損失は理論式と 良く一致した。また、電極直径が小さいほど、上記一致が大きな流量 まで得られていた。今後、より詳細な検討が待たれる。
新潟大・イムラ材研のグループは、対向型の高温超電導バルク着磁 装置を利用して、NdFeB系焼結試料(長さ:76 mm、幅:50 mm、厚み: 5 mm)を静磁場着磁した結果を報告した。バルク磁石を、試料の表面 と裏面を少しオーバーラップさせながらスキャンするユニークな着磁 法によって、試料表面にピーク値0.2 T程度の8極磁場を形成することに 成功した。


磁気誘導 2D-a05-06 座長 植田 浩史

このセッションは、2件の大阪大学の関連発表であった。Drug Delivery Systemにおいて薬剤を標的部位に誘導後、目的患部に精密集積せることを目的とした提案である。
2D-a05はモデル系での検討、2D-a06は生体内での検討である。既に非侵襲の患部への粒子の集積に成功しており,その続きとして低侵襲の局所患部への集積を目指したものである。 薬剤を標的部位(本報告では5 mm程度の大きさの初期がんを想定)に誘導後、強磁性針と印加磁場を用いた薬剤の局所集積を試み、その実用化の可能性を検討した。 患部と毛細血管の位置,薬剤の投入箇所について質問があった。また、磁性針を利用して薬剤配送の集積をあげるのであれば,注射で直接投入してもよいのではないかと質問が出たが、 現在は非侵襲の局所集積を検討しているとのことである。


熱伝達 2D-a07-11 座長 岡村 崇弘

本セッションは2件の液体水素の熱伝達、3件の超流動ヘリウムの熱伝達、流動 特性に関する報告が行われた。
(液体水素に関する伝熱研究)
2D-a07は、液体水素のプール冷却における定常熱伝達に関する実験であり、質疑 の場においてCHFの圧力依存性に関して議論がなされた。
2D-a08は、液体水素の強制対流中における定常熱伝達に関する実験で、DNB熱流 束の流速依存性、チャネル形状依存性(L/d)等に関する報告があった。定常熱伝 達曲線を実験から得るにあたりその実験方法に関する質疑応答が行われた。  これらの液体水素のプール、強制流動伝熱特性に関する実験データそのものが 貴重であり、今後の更なる研究が期待される。 (超流動ヘリウムに関する伝熱・流動特性)
2D-a09は、超流動ヘリウムの非対称隘路をもつ流路中の定常熱伝達の3次元計算 に関して、2つのコントラクション間を種々変えることで計算を行い、コントラ クション間隔とスーパー成分、ノーマル成分の挙動と臨界熱流束の関係を明らか にしている。
2D-a10は、超流動ヘリウム中における細線ヒーター周りの膜沸騰モードと蒸気膜 厚さの関係に関する報告で、実験データを解析することで、異なる膜沸騰モード で統一的に記述できる膜厚を計算する式を提示している。
2D-a11は、筑波大学がこれまで行ってきた超流動計測で用いられたPIVでは何が 測定されているかの発表が行われた。トレーサー粒子は"基本的には"スリップ無 しでノーマルに追随するが、高密度の量子渦(QV)があるとノーマルとの間にスリ ップが生じる、もしくはノーマルと反対方向に運動するQVにトラップされたトレ ーサー粒子との平均場を見ているということを、スーパーのノーマルが同方向運 動するcoflowの実験データと比較することで間接的に明らかにしており、興味深 い内容であった。
3者いずれも、数値解析、実験により超流動ヘリウムという特殊な流れ場を可 視化しており今後の発展が期待される。


5月13日(木)
P会場 ポスターセッションII 13:50-15:20

Y系物性 2P-p01-04 座長 柿本 一臣

中村(九大)等は、10 mm幅のRE系テープ線材を今までの5分割からさらに10分割、20分割までスクライビング加工した線材の交流損失を測定し、 分割数に応じた交流損失の低減(1/10,1/20)ができることを示した。
畠山(ISTEC)等から、IBAD-MgO層を10分程度加湿処理することにより、その上に形成されるCeO2層の配向性が改善 (5.94°→3.07°)されるとの興味深い報告があった。 中西(昭和電線)等のIBAD基板上へCeO2キャップ層をRF-Sputter法により長尺成膜した結果報告では、80m長IBAD-MgO基板においてΔΦ~5° のCeO2層が形成できるに至っていた。 吉田(岩手大)等は、Gd系超伝導バルクのピン止め点の面内分布が厚さ方向でどのように変化しているかを補足磁場分布やMagnetoscan法などで調査しており、 バルクの厚さの増加と共に磁場が侵入し難くなっていることを報告していた。


Y系応用基礎 2P-p05-10 座長 宮崎 寛史

2P-p05: 九大の渋田らは、コイル層間の最適転位位置からずれた場合に発生する付加的交流損失を減らす方法について発表を行った。
2P-p06: 九大の高山らは、ダブルパンケーキコイルの転位方法について発表を行った。コイル外周部でのみ転位を行うことで偏流を防止できるということであったが、 転位位置の位相がずれた場合にどのようになるか今後検討するとのことである。
2P-P07: フジクラの大保らは、RE系のコイルを試作し、伝導冷却での通電試験結果について発表を行った。外部磁場中では、磁場が高くなるとコイルn値が減少するということであった。
2P-P08: ISTEC-SRLの本間らは、RE系の含浸コイルを試作し、臨界電流値とn値に関する検討について発表を行った。伝導冷却で通電試験を行いn値30以上と高い特性を有しているとのことであった。 また、熱暴走試験もあわせて実施し、線材のIcが低い箇所が発端となり熱暴走しているとのことであった。
2P-P09: 早稲田大の室町らは、4本積層導体を使用したY系コイルのクエンチ保護について発表を行った。線材の電流差を検出することでクエンチを検出するとのことであった。
2P-P10: 物材機構の松本らは、RE系テープ線材の磁場遮蔽について、実際にRE系テープ線を束ねて磁場遮蔽効果について調べた結果について発表を行った。 10 Tを超える磁場中でも遮蔽の効果があるとのことで、実際の超電導コイルを設計する際に、考慮する必要があるとのことであった。


コイル応用 2P-p11-13 座長 川畑 秋馬

岡山大の七戸らは、超電導コイルの瞬時有効電力をモニタリングしてクエンチ保護を行うシステムを冷凍機冷却型NbTi超電導マグネットに適用した結果について報告した。 保護システムは首尾良く機能し、4.2 Kに冷却されたマグネットのクエンチ後の最高到達温度は43 Kに抑えられたことを示した。
九工大の中村らは、液体窒素温度で動作するBi-2223超電導マグネットの高磁場化について検討した結果、鉄の利用による線材への垂直印加磁界成分の低減とコイル巻数を増加させることにより、 直径約50 mmのボア内に1.5 T以上の高磁場を発生できることを示した。
NIFSの尾花らは、重粒子線がん治療に用いられる回転ガントリーと呼ばれる装置の軽量化および小型化のために、この装置に使用されている常電導マグネットの超伝導化について検討した。 鉄が飽和しない場合および飽和する場合の両方において、要求される磁場精度を満たす設計ができたことを報告した。今後の装置開発の進展に期待したい。


MgB2(2) 2P-p14-15 座長 松本 明善

本セッションでは2件の報告があった。一件は熊本大学米倉氏からの講演で鹿児島大学で作製されたAl基板上に作製したMgB2薄膜の評価を磁場方位依存性と ピン止め効果について中心に議論を行った。Al基板上へ作製したMgB2薄膜は10 K、5 Tの磁場中においても1 MA/cm2級の高Jcを示している。 一方、強いc軸依存性をしめしており、粒界に起因する強いc軸相関ピニングセンターが存在することを示唆している結果を報告した。
もう一報は九州工業大学と鹿児島大学、日立、核融合研の共同研究でMgB2丸線材をテープ状に加工していったときの超伝導特性についての報告である。 圧延によってBc2が増加し、Jcも増加していく様子が見られた。これらの増加と共に異方性も増加していることからc軸配向が強くなったため であると考えられる。異方性が小さいと言われたin-situ線材においてもアスペクト比2程度で異方性が生じていることは興味深い結果と言える。


バルク(1) 2P-p16-17 座長 中島 健介

ポスターセッション「バルク(1)」 では,岩手大学の菊池らによる「DyBCO系超電導バルクの作製と置換効果」と山口大の原田によるY系バルク超伝導体を用い た演示実験用磁気浮上装置の製作」の2件の講演があった。前者は,DyBCOのDyサイトの一部をDyよりイオン半径の大きなLa,Pr,Gdで置換することで局所歪によ りピンニングセンターを導入しようと試みた結果として,ほぼ全ての元素でJcの向上する最適な置換量があることを報告した。 後者は,山口大学が中心となった地域連携プロジェクト「長州科学維新プロジェクト」での演示を目的に製作した大型磁気浮上装置が紹介された。 最大直径340 mmの多重円周上に配置したネオジ鉄永久磁石による浮上子と液体窒素に浸けた多数のRE123系超伝導体(φ30×10 mm×18個,φ46×7 mm×26個)と によって浮上高12 mmが長時間安定に得られている。


核融合(1) 2P-p18-21 座長 藤吉 孝則

本セッションでは、4件の報告があった。
辺見(原子力機構)らは、核融合炉用超伝導コイルに使用されるケーブル・イン・コンジット導体の内部歪測定を、 J-PARCの工学材料回折装置「匠」による中性子回折も用いて直接観測した。評価された歪は、Nb3Sn素線の単体の値に近いことを確認している。
淺川(原子力機構)らは、JT-60SAの高速位置制御コイルの概念設計において熱・構造解析結果について報告した。サポート構造を含めた熱解析と構造解析により構造の健全性を確認している。
柳(NIFS)らは、ヘリカル型核融合エネルギー炉におけるヘリカル・ダイバーコイルへのHTS導体の適用について検討している。
神林(早大)らは、Bi2223線材とYBCO線材の中性子照射前後の超伝導特性について報告した。両線材とも照射前後でIcn値に大きな変化がないことを確認している。


超電導応用(2) 2P-p22-24 座長 川畑 秋馬

産総研の海保らは、超電導コイルで発生する電磁力を利用した人工震源の開発研究の一環として、Y系線材で作製したパンケーキコイル(内径48 mm、外形240 mm)の50 Hz通電時の 運転電流の安定性について検討した。垂直磁界がテープ中心部まで侵入していないと仮定したときの交流損失による温度上昇を計算し、冷却特性との熱バランスの関係から温度上昇の上限値を示した。
新潟大の福井らは、半導体の低品質化や歩留まり低下の原因とされているスピン処理装置回転軸からの微粒子状ダストの問題を解決するために、 装置のターンテーブル部分を高温超伝導バルクで磁気浮上させる方式の非接触スピン処理装置の開発結果について報告した。試作した小型の要素試験装置での浮上回転試験の結果、2000 rpm / 2 secの 要求回転性能は満たしたが、発生する振動を抑えるための制御や位置合わせの仕方が今後の課題であるとのことであった。
NIMSの岡田らは、新薬開発などに活用される結晶性の良いタンパク質作製に適した磁場環境を提供できる超伝導マグネット製作への寄与を目的として、 微小重力環境下でのタンパク質の結晶化をシミュレートするために行った磁気力を受けた純水の対流現象のシミュレーション結果について報告した。 実験装置も今年中に試作されるとのことで、今後の研究の進展が期待される。


計測/流動特性 2P-p25-30 座長 武田 実

本ポスターセッションでは、6件の発表があった。 2P-p25(鉄道総研:水野ら):10 Kまでの極低温下において、FBG光ファイバ温度センサの再現性及び多点温度測定特性が報告された。 測定は問題なく実施できる見込みが得られたが、再現性は厳密な確認を行うデータがまだ得られていない。
2P-p26(鉄道総研:田中ら):極低温でFBGセンサの温度分解能を向上させるために、アクリル樹脂(PMMA)とニッケルをコーティング材料として使用した。 PMMAでは予想どおりの効果が確認できたが、ニッケルでは確認できなかった。
2P-p27(飛島建設:田村ら):波長多重化(WDM)方式ではなく、時間分割多重化(TDM)方式を用いてFBGセンサの多点温度計測試験に成功した。 TDM方式では、1本の光ファイバ上で計測点を100程度まで増やすことができる。
2P-p28(豊橋技科大:北村ら):HTS-SQUIDマグネトメータを用いた地下資源探査を目指し、SQUID直近に低温トランスを配置して低ノイズ化を図った。 低温トランスと常温トランスとの組み合わせについて、最適条件を検討した。
2P-p29(KEK:岡村):垂直チャネル中での超臨界ヘリウムの自然対流伝熱機構における、乱流遷移のチャネル形状依存性を計算で調べた。 計算では縦溝(リブレット)が設けられた矩形チャネルの長さ、幅、個数等を変え、渦管の縺れ合いを考慮して乱流遷移の熱伝達特性を解析した。
2P-p30(山口大:諸橋ら):低温・多元・省エネ・コンパクトな回転型低温6元対向スパッタ装置を用いて、Nb/AlOx-Al/Ta/Nb接合を作製した。


5月13日(木)
A会場 特別講演 16:40-17:40




5月14日(金)
A会場 9:15-11:45

鉄系超伝導体 3A-a01-03 座長 鈴木 光政

吉田(名大)らは,Nd:YAGレーザー(λ= 532 nm)を用いて、Fe-Te-S系薄膜の作製を検討した。ターゲット組成は、 Fe:Te:S=1:0.75:0.21である。堆積速度や基板材質(MgO,STO,LAO)を変えて、Tc軸配向性や面内配向性の関係を追求している。
一瀬(電中研)らは、レーザー蒸着法により各種基板上に製作されたFe(Se0.5Te0.5)膜について、 基板界面付近の初期成長層の微細構造を分析した。特に,超伝導遷移が観測されなかった薄膜(YSZ基板)では,層内に異相が形成され、 高濃度の酸素の混入を観測した。
東大の下山らは,種々の鉄ニクタイド超伝導体の焼結体試料を作製し、不可逆磁場の温度依存性を求め、ブロック層厚の影響を指摘している。


特別セッション S-イノベ 3A-a04-09 座長 大崎 博之

科学技術推進機構(JST)の産学イノベーション加速事業:戦略的イノベーション創出推進(S-イノベ)として採択され、平成21年度より研究開発がスタートした 4つのテーマのうちの一つである「超伝導システムによる先進エネルギー・エレクトロニクス産業の創出」についての特別セッションが、 学会3日目の午前中後半にあり、6件の講演と質疑が行われた。
まず、プログラムオフィサー(PO)の佐藤謙一氏(JST・住友電工)から、研究開発テーマの概要と、運営の方針、期待される成果等についての紹介があり、 続いて、この研究開発テーマのもとで取り組まれている以下の5つの研究課題について、それぞれのプロジェクトマネージャー(PM)あるいは研究・開発リーダー等から紹介があった。
・高温超伝導SQUIDを用いた先端バイオ・非破壊センシング技術の開発(神鳥明彦氏(日立基礎研))
・大出力超伝導回転機器に向けたキーハードの開発(和泉充氏(東京海洋大))
・高温超伝導を用いた高機能・高効率・小型加速器システムへの挑戦(雨宮尚之氏(京大))
・高温超伝導材料を利用した次世代NMR技術の開発(末松浩人(日本電子))
・次世代鉄道システムを創る超伝導技術イノベーション(富田優(鉄道総研))
超伝導システム応用を広くカバーする最長10年間の研究開発プロジェクトであり、今後の進展が大いに楽しみである。


5月14日(金)
B会場 9:15-11:45

ITER 3B-a01-05 座長 柳 長門

国際熱核融合実験炉ITERのマグネットについて、原子力機構から5件の発表があった。
トロイダル磁場(TF)コイルについては、CIC型Nb3Sn導体の調達作業が進行しており、模擬導体に加えて実導体4本が完成している。 導体のジャケットは、13 mずつを突合せ溶接して最大長760 mとなるが、撚線をスムーズに引き込むため、レーザを用いた凹凸部寸法測定システムを 用いて溶接部が入念に管理されている。また、撚線にかける引き込み力について入念に検証されている。【3B-a01】
Nb3Sn素線の日本の担当分(TFコイル用23,000 km、CSコイル用26,000 km)について、2社で製造が進んでいる。100 kmごとに測定された 臨界電流や履歴損失はすべて仕様値を満足し、±3σのばらつきに収まっている。TFコイル用導体サンプルについては、スイスのサルタン装置で試験され、 定格運転条件(11.8 T、68 kA)で分流開始温度5.7 K以上の合格基準を満たしている。ただし、繰り返し励磁や加温後の再冷却によって分流開始温度が 少しずつ低下することが確認された。ITERの励磁回数と冷却回数に対して許容される範囲内と想定されるが、今後のさらなる検討を待ちたい。【3B-a02】
TFコイルの日本担当分としては、2016年末までに9個が製作される計画である。現在、ラジアルプレート用ステンレス鋼の圧肉圧延材の試作が行われている。 2013年からは3分の1サイズのコイル巻線が行われる計画であり、ジャケットと模擬導体の引っ張り剛性の違いなどを確かめつつ、巻線システムの検証が行われている。【3B-a03】
大型構造物で高精度の加工を求められるラジアルプレートについては、歩留まりの向上をめざして、HIP法を用いたセグメント製作技術が新しく開発されている。 機械試験の結果、4 Kにおいて破壊靭性値が若干不足していることがわかったため、酸化皮膜を除去するための工夫や温度の最適化が行われている。【3B-a04】
構造物の溶接技術についても入念な検証が行われている。完全オーステナイト系のTIG溶接ワイヤが使用され、溶接品質を確保しつつ溶接歪みを最小化している。 狭開先自動TIG溶接の条件設定が入念に検証され、インボード側曲線部セグメントのコイル容器とPCRフランジ間の継手試作において、最大260 mmの溶接が問題なく行われた。【3B-a05】


核融合(2) 3B-a06-09 座長 船木 和夫

LHDコイル系の特性評価に関する発表が2件(核融合研)、Nb3Sn線材の高磁界下での超伝導特性への中性子照射効果に関する発表が2件 (核融合研、JASTEC他)あった。まず、LHDヘリカルコイルにおける常伝導伝播をコイルの外側に取り付けたピックアップコイルにより測定した 結果について報告があった。大型導体の常伝導転移時の電流路変化に注目した測定法である。特異な常伝導伝播現象について興味深い結果と 考察であった。ポロイダルコイルについては、CIC導体の圧力損失の長期観測結果を従来の経験式と比較検討すると共に、冷却システムの 品質管理との関係についても言及があった。次に、中性子照射を行ったNb3Sn線材の高磁場における臨界電流特性に対する照射効果に ついて系統的な検討結果が報告された。中性子照射により臨界電流特性が向上する磁界領域についての興味深い結果が示された。また、このような 高磁界領域での超伝導特性を研究する設備として、15.5 T超伝導磁石用温度可変インサートの熱伝導、熱伝達特性について詳細な試験結果の報告も なされた。


5月14日(金)
C会場 9:15-11:45

HTSコイル(1) 3C-a01-05 座長 高畑 一也

本セッションでは,Y系線材を用いたコイル製作,高温超伝導コイルの保護,Bi系線材のジョイントに関する5件の発表があった。 Y系線材を用いたコイル製作に関する発表が3件あり,その内2件で,コイル形状においてIcn値の劣化が見られたとの報告があった。 その劣化の原因について発表後も活発な議論が交わされた。コイル作成時の機械的な損傷だけでなく,線材長手方向のIcのバラツキが影響しているとの指摘も なされた(3C-a05)。高温超伝導コイルの重要な課題は,熱暴走による局所的な温度上昇と焼損である。その熱暴走を解析で定量的に予測できることが実験結果 との比較で示された(3C-a02)。またその局所的な異常を,電圧タップではなくポインチングベクトル法によって,非接触(クライオスタットの外からでも)で 検出できる可能性が実験的に確かめられた(3C-a03)。


HTSコイル(2) 3C-a06-09 座長 小田部 荘司

4件の発表があった。九州大学の野上らは4.2 Kで5T を発生できる DI-BISCCOを用いた小型コイルの交流損失について発表した。電源の関係で5 Tであるが、395 Aで7 Tを発生させることができる性能がある。 線材の短尺試料について垂直と平行磁場下における交流損失を測定し、一方でコイル全体の交流損失も測定した。まだ短尺試料からコイル 全体の損失が評価できるかの検討は行われていない。
東北大学の津田らはSMESや直流リアクトルに使われるY系コート線材を用いたトロイダルコイルの偏流の問題について議論をおこなった。 特にテープ線厚の違いにより影響が大きく、これを防止する方法を提案した。議論ではトロイダルコイルの配置の方が問題ではないかという指摘 があったが、実際にはテープ線厚がかなり影響するということだった。
東芝の宮崎はY系コート線材を用いた含浸コイルのフープ力印加試験について報告した。10巻で直径約300 mm のコイルを2つについ て600 A程度の通電を行い、NiW基板で400 MPa, ハステロイ基板で600 MPa程度のフープ力を印加した。通電前後で臨界電流特性の劣化 が無いことを確認した。
東芝の岩井らはY系コート線材の伝導冷却型パンケーキ積層コイルの通電特性について報告をおこなった。樹脂含浸した際に冷却でコイルが 劣化することが知られており、今回は作製に工夫をおこなった。その結果4つのパンケーキから成る積層コイルで20 Kまで冷却し1.5 Tの磁場を 発生させ、特性の劣化の無いことを確認した。


5月14日(金)
D会場 9:15-12:00

スラッシュ流体 3D-a01-05 座長 高田 卓

セッション「スラッシュ流体」は、液体窒素における気液2相流の研究が1件、スラッシュ窒素を使用した研究が4件であった。 どの研究も、長尺の高温超伝導送電線を冷却することを念頭に置かれ、発表が行われた。スラッシュ流体における重要な論点である、 スラッシュ流体中のRe数の取り扱いや、固体窒素の融解の問題などアカデミックな内容について活発な議論が行われると同時に、 システムとしての実現可能性、そのためのロードマップに話が及ぶなど幅の広い議論となった。特に、スラッシュ窒素において サブクール窒素よりも圧力損失低減効果が大きい事が、従来から研究されてきた平滑円管に加え、コルゲート管について も見られることが発表され、平滑管においてスラッシュ流体の伝熱特性についてデータ集積が進むなど、スラッシュ流体特有の 固体粒子を伴う流動が引き起こす特性に注目が集まった。これらの物理的な解説にむけての取り組みが期待される。 発表された数値解析結果についても、現在までの成功に加えて、今後は固体粒子間の相互作用を付加する事、ラグランジュ的な 視点による解法を検討する旨が、質疑の中で語られ、進展を予感させた。最後に、スラッシュ窒素中の固体窒素粒子の生成方法に おいての粒子径制御の可能性を示す実験結果が示された。数十μmの粒子径の作製に成功しており、現在は基礎的研究の段階で はあるものの、長期間の運用におけるメンテナンスコスト、信頼性など今後のケーブル冷却実現へ向けた展開を期待させるものであった。


バルク(2) 3D-a06-10 座長 筑本 知子

東大の赤坂らは、Y123バルク体においてa-growth領域で種結晶より遠くなる程、特性が低下する現象について、還元雰囲気下でのポストアニール処理が有効であることを示した。 またポストアニールは特に低温でのJc特性の改善に大きな効果を示すことも指摘した。
岩手大の古田らは、NMR等への応用を視野に入れて、バルク体を厚くした時のパルス着磁特性について、バルク体を2段重ねることにより検証した。 バルク体を2段重ねた場合には、1段の場合より磁束の侵入開始磁場が高磁場側にシフトし、また捕捉磁場が小さくなることが明らかとなった。
続いて岩手大の藤代らは、パルス着磁時の磁場侵入とフラックスフローによる熱の発生とその伝搬について、シミュレーションを行なった結果について紹介し、 磁場のピークを温度ピークに近づけることで磁束クリープを低減できることを示唆した。
東大の関野らはバルク体において、growth sector boundary方向で捕捉磁場が減少し、磁場分布が不均一となることの解決策の一つとして、 バルクを同心円状にサンドブラスト加工によって切り出し、各リングを相対的に回転させることで、均一化を試みた結果を報告した。 実際に行なった加工では4つのリングへの加工であったが、これにより、軸方向の捕捉磁場変動が0.9%から0.3%に減少することを示した。
成蹊大の二ノ宮らは、1対の着磁したバルク体間に軟鉄製円柱を浮上させた状態で、バルク体間距離を変化させたときの、バルク体近傍での磁束密度変化をホール素子によって計測した結果を示した。